大判例

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大津地方裁判所 平成8年(行ウ)1号 判決

原告

有限会社共栄産業(X)

右代表者代表取締役

林義雄

右原告訴訟代理人弁護士

福村武雄

村田勝彦

須田滋

被告

滋賀県収用委員会(Y)

右代表者会長

上田次郎

右被告指定代理人

下村眞美

岡田和信

伊東利克

北村繁隆

西澤富美男

吉村信雄

水野潔

参加人

草津市(Z)

右代表者市長

古川研二

右参加人訴訟代理人弁護士

前堀克彦

市木重夫

福井啓介

右復代理人弁護士

中隆志

右参加人指定代理人

金澤郁夫

中島直樹

進藤良和

澤田圭弘

北中建道

河邊芳次

西仁

岸本博光

今井博詞

加藤幹彦

小西正樹

黒川順平

田中義一

事実及び理由

第五 争点に対する判断

一  本件収用裁決手続自体の違法性(争点一)について

原告は、参加人が、原告に対し、本件都市計画事業の詳細を全く説明しなかったことは、土地収用法二八条の二に基づく周知措置が取られていないと主張するので、以下検討する。

土地収用法二八条の二によれば、「起業者は、第二六条第一項の規定による事業の認定の告示があったときは、直ちに、建設省令で定めるところにより、土地所有者及び関係人が受けることができる補償その他建設省令で定める事項について、土地所有者及び関係人に周知させるため必要な措置を講じなければならない。」とされており、都市計画法七〇条により、都市計画法六二条一項による告示は右事業認定の告示とみなされるため、同様に、周知させるために必要な措置をとらなければならない。

本条は、事業認定の告示の効果が、土地所有者及び関係人に与える影響が大きいことから、告示等に加えて、特に、それらの者に周知させるために設けられたものと考えられるところ、本件の場合、告示は平成三年一月二五日になされているが、証人赤尾明の証言、交渉経過概要書(〔証拠略〕)及びその陳述言(〔証拠略〕)によれば、平成元年一二月から、都市計画事業の説明と協力要請がされ、告示以降も、平成三年六月一八日から本件収用裁決申請まで、原告が強く収用を拒否する態度をとっているなかで、二四回にわたり交渉が重ねられていたことが認められる。

したがって、本件の場合には、告示後、直接原告に対して、多数回にわたり交渉しており、計画等の説明がなされていたものと認められるので、原告に対して土地収用法二八条の二の周知措置が取られなかったとする主張は理由がない。

なお、原告は、原告に対する都市計画法六六条の規定による周知措置義務違反の主張もしている。同条は、「告示があったときは、施行者は、すみやかに、建設省令で定める事項を公告するとともに、建設省令で定めるところにより、事業地内の土地建物等の有償譲渡について、公告による制限が生じることを関係者に周知させるため必要な措置を講じ、かつ、自己が施行する都市計画事業の概要について、事業地及びその附近地の住民に説明し、これらの者から意見を聴取する等の措置を講ずることにより、事業の施行についてこれらの者の協力が得られるように努めなければならない。」旨規定するところ、その周知方法については都市計画法施行規則五三条により、その内容については建設省令により定められているが、その趣旨は、同様に、関係者に事業の内容、その効果を周知させようというものである。本件の場合には、前記認定のとおり、原告に対して直接に説明がなされたものと認められるので、原告に対する都市計画法六六条違反事由があるとは認められない。

よって、この点に関する原告の主張も理由がない。

二  本件都市計画事業変更認可の違法性(争点二)について

1  本件収用裁決取消訴訟において、先行処分である本件都市計画事業変更認可の違法を主張することができるか。

本件収用裁決は、土地収用法四八条一項、四九条一項(四七条の二第一項、二項)に基づくものである。

そして、土地収用法上の権利取得裁決及び明渡裁決(以下「収用裁決」という。)は、先に同法二〇条の事業の認定がなされていることを前提とし(土地収用法三九条一項)、これに引き続いて行なわれるもので、事業認定と収用裁決とは、その直接の効果は異なるものの、両者は相結合して事業に係る起業地の収用等という一つの法律効果の発生を目指す一連の行為であり、事業認定自体は具体的権利義務関係を形成する法律効果が希薄なもので、後行の収用裁決をまってはじめて処分による権利義務関係が具体的に形成されるものである。このような場合にあっては、先行の事業認定に違法があれば、後行の収用裁決は当然に違法になり、収用裁決の取消訴訟において、事業認定の要件は審理判断の対象となるものと解するのが相当である。

ところで、都市計画法は、七〇条一項において、都市計画事業については土地収用法二〇条の規定による事業の認定は行なわず、五九条の規定による認可または承諾をもってこれに代えるものとし、六二条一項の規定による告示をもって土地収用法二六条一項の規定による事業の認定の告示をみなすと定めている。

また、都市計画法七〇条二項によって、事業計画を変更して新たに事業地に編入した土地については、都市計画法六三条の事業変更認可によることとなる。

したがって、都市計画事業変更認可は、右のとおり土地収用法上の事業認定とみなされるから、同様に、右事業変更認可の要件は審理判断の対象となるものと解するのが相当である。

この点に反する被告の主張は採用しない。

2  本件都市計画事業変更認可が本件都市計画変更決定に適合するか(都市計画法六一条一号、六三条一項、二項)。

(一)  土地の区域が適合するか。

原告は、本件都市計画事業変更認可は、本件都市計画変更決定において、事業地とされていない渋川一丁目字藤ノ木を認可した齟齬があると主張するが、本件都市計画変更決定は告示されており、その告示によれば(〔証拠略〕)、土地の区域には、渋川一丁目が加えられていることから、本件都市計画事業変更決定においても、渋川一丁目の土地が区域とされていたことが認められる。そして、渋川一丁目字藤ノ木は、渋川一丁目内にあることは明らかであり、本件都市計画変更決定の土地の区域と本件都市計画事業変更認可により認可された事業地との間に齟齬はない。

よって、この点に関する原告の主張は理由がない。

(二)  設置される施設が適合するか。

原告は、本件都市計画変更決定において、構造が地表式であるとされているにもかかわらず、本件都市計画事業変更認可においては、地下施設を含めて認可した齟齬があると主張しているので、以下検討する。

都市計画には都市施設として道路を定めることができ(都市計画法一一条一項一号)、道路については、政令により(同条二項)その構造を定めることとなっている。そこで、本件都市計画変更決定においては、道路の構造は地表式となっている(〔証拠略〕)。

そして、それに対応する本件都市計画事業変更認可において地下式道路を認可したことは認められない(〔証拠略〕)。

よって、原告の主張のうち、道路が地下式であるから齟齬するとの点は認められない。

もっとも、原告は、本件都市計画駐車場のアプローチ部分等を地下施設とした上でその認可を行ったと主張するようであるが、かかる認可がされたものとは認められない。

よって、この点に関する原告の主張も理由がない。

三  本件都市計画変更決定の違法性(争点三)について

まず、都市計画事業の認可(事業変更認可を含む)は、適法な都市計画決定(変更決定を含む)がなされていることを前提として、その上に積み重ねられる手続であるから、都市計画決定が違法であれば、当然その認可も違法となるものであり、都市計画決定の違法事由は、認可の違法事由ともなり、ひいては収用裁決の違法事由ともなると解すべきである。

よって、以下、原告の主張する本件都市計画変更決定の違法事由として主張するところを検討する。

1  存在しない地名を告示したことにより違法となるか。

原告は、本件都市計画変更決定の前提となる都市計画決定(昭和四七年六月二〇日滋賀県告示二四四号)の告示が、存在しない「大路一丁目比の端」を路線の起点として告示したことをもって、その告示は無効であると主張する。

しかしながら、都市計画法二〇条一項がそもそも都市計画決定の告示を求めた趣旨は、都市計画の効力の発生を明らかにするとともに(同条三項)、関係者に周知させようというものである。そして、都市計画は、都市計画法一四条一項により建設省令で定めるところにしたがって、総括図、計画図及び計画書によって表示され、また、右告示に際しては、都市計画法一四条一項の図書またはその写しを公衆の縦覧に供されている。

本件の場合、本件都市計画変更決定の際に、公衆に縦覧された統括図、計画図及び計画書によれば、都市計画の路線の起点は「西北の端」であることが認められ、したがって、告示の「比の端」は「西北の端」の誤記であることも認められる。また、右図書は公衆の縦覧に供されていたのであるから関係人に周知されていたことも認められる。よって、当該誤記をもって、都市計画法二〇条の趣旨に反するものであり、本件都市計画変更決定の前提となった右都市計画決定や本件都市計画決定自体が取り消される程度の違法とまでは解されない。

よって、この点に関する原告の主張も理由がない。

2  名称変更にかかる告示が欠如しているか。

原告は、本件都市計画事業変更認可について、都市計画事業の名称を「大津湖南都市計画道路(事業)3・4・81号草津駅前線」であったのを「大津湖南都市計画道路(事業)3・4・81号草津駅前線ほか一線」と変更したのであるから、都市計画法二一条及び二〇条の都市計画決定変更の告示が必要であると主張する。

しかしながら、都市計画事業の名称の変更とする事情が生じた場合には、都市計画の名称の変更を必要とする場合があるけれども、本件については、駅前線と上笠線の二つの都市計画事業を一本化したために名称が「草津駅前線ほか一線」とされたものであって、この場合には、都市計画の名称が変更された場合ではないので、都市計画の名称変更に関する都市計画法二〇条の告示は要しないというべきである。

また、事業名称の変更については、その旨の滋賀県告示第二四号(〔証拠略〕)がされているため、取消し得べき瑕疵も何ら見出せない。

よって、この点に関する原告の主張も理由がない。

3  告示における字名が欠落しており違法となるか。

原告は、都市計画決定の告示については、「字」まで表示しなければならないのに、本件都市計画変更決定の告示(〔証拠略〕)においては、「字」名の記載をしていないと主張する。

都市計画法二〇条一項によれば、都市計画決定の告示をしなければならないとの定めがあるものの、土地の区域の表示をどのようにしなければならないかについては定めがなく、結局、告示が要求される趣旨によることとなる。

この点、都市計画決定の告示については、一般に「都市計画の手続」(〔証拠略〕)に定められた様式によっているところ、住居表示がなされている地域では「字」名の記載を省略する扱いとなっており(〔証拠略〕)、その扱い自体は右告示の要求される趣旨にもとるものではないと考えられ、本件は、その例にならったものと判断できるので、何ら違法とは認められない。

さらに、都市計画決定の際には、都市計画法一四条一項の図書も公衆の縦覧に供されており、本件都市計画変更決定の際にも同様に公衆の縦覧に供されたことが認められる。

したがって、告示において「字」名の省略をしたことをもって、本件都市計画変更決定がその手続に違反して違法、無効なものであるとは解されない。

よって、この点に関する原告の主張も理由がない。

4  必要の無い都市施設を設置するために変更した違法があるか。

原告は、本件都市計画変更決定が、設置する必要の無い地下通路のためになされた点が違法であると主張する。

都市計画法は、一三条において、都市計画基準を定めるが、その定めは、全国総合開発計画等その他国土計画又は地方計画に関する法律に基づく計画及び道路等の施設に関する国の計画に適合するとともに、当該都市の特質を考慮し、土地利用、都市施設の整備及び市街化開発事業に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを、一体的かつ総合的に定めなければならない(同法一三条一項本文)とし、都市施設については、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めることとしている(同条五号)。

右の規定は、いずれも一般的抽象的であるところ、それは、都市計画が広い地域を対象にして様々な利益を考慮しながら政策的に総合して定められるものであること、都市施設の規模をどのようにするか、またこれをどのように配置するかといったことは、一義的に定めることのできるものでなく、様々な利益を衡量し、これらを総合して政策的、技術的な裁量によって決定せざるを得ない事項であるからにほかならない。

したがって、このような判断については、技術的な検討を踏まえた政策として都市計画を決定する行政庁の広範な裁量権の行使に委ねられた部分が大きいものであるといわざるを得ないから、都市施設に関する都市計画の決定は、これを決定する権限を有する行政庁がその決定について委ねられた裁量権の範囲を逸脱し、あるいはこれを濫用したと認められる場合に限って違法となるものというべきである。

本件の場合、本件都市計画変更決定は、本件都市計画駐車場への入口(もっとも原告は入口地点についても争っているが)を設ける目的等からなされたものであるが、本件都市計画駐車場の存在を前提にして、その本件都市計画駐車場との接続をどのようにするかについては、参加人草津市の裁量に委ねられているものというべきである。

そして、原告が主張する地下部分の二車線である必要が無いとめ主張は、本件駐車場都市計画の違法の主張であると考えられるところ、この違法が本件都市計画決定の違法事由として主張できないことは後記四のとおりであり、その他に本件都市計画変更決定が不必要な土地を対象としているとの主張はないのであるから、本件都市計画駐車場の存在を前提にした本件都市計画変更決定も裁量を逸脱したものとは認められず適法なものとなると考えられる。

したがって、原告の主張は理由がない。

四  本件駐車場都市計画決定の違法性(争点四)について

1  本件都市計画変更決定の違法事由として本件駐車場都市計画決定の違法を主張することができるかどうかについて検討する。

本件都市計画変更決定が適法であることの要件としては、都市計画法の定めるところによるが、同法には、その内容について同法一三条により、その主体、手続について同法一五条ないし二四条に規定しているところである。

しかしながら、問題となる都市計画決定以外の都市計画が適法であることまでを要求する規定はないのであるから、当該都市計画決定以外の都市計画の適法違法は本来無関係であり、その他の都市計画決定の違法事由を主張することは主張自体失当というべきである。

本件においても、本件都市計画変更決定と、その他の都市計画である本件駐車場都市計画決定は、別の都市計画決定なのであるから、本件駐車場都市計画決定の違法を主張することは主張自体失当というべきである。

もっとも原告は、一般的に、先行の行政行為が独立して訴訟の対象とならない場合には、先行行為が後行行為の前提となったり、要件に関わるなどの関連がある限り、後行行為の効力を争う訴訟において、先行行為の違法、適法は当然に審査されるとした上で、本件の場合において、駐車場都市計画決定は本件都市計画事業変更認可の前提となっていると主張する。

しかしながら、右の主張のうち先行行為が後行行為の前提となるというのは、その後行行為の根拠法律において、その先行行為が法的に前提となっているということであって、単に事実上前提となっているという場合には、当たらないというべきである。

これを本件都市計画変更決定についてみるに、本件都市計画変更決定が、本件都市計画駐車場整備のためになされたことは明らかであるが、本件都市計画変更決定が、その根拠となる都市計画法において、本件駐車場都市計画決定を法的に前提にしているとはいえない。このことは、先に述べたとおり、都市計画法が、他の都市計画決定の適法性を要求していないことからも明らかである。

よって、原告の主張は採用しない。

2  したがって、本件都市計画変更決定の違法事由として本件駐車場都市計画の違法が主張できることを前提とした争点四の2ないし4及び争点五に関する原告の主張は、その主張事実の存否について判断するまでもなく失当である、

五  本件土地地下部分について収用裁決するためには、本件駐車場都市計画変更決定及びその事業認可が必要であるか(争点六)について。

原告は、この点、本件都市計画変更決定は本件都市計画駐車場を設ける必要上されたのであるから、本件駐車場都市計画についても事業認可を必要とすると主張する。

しかしながら、起業者が土地を収用するためには、事業の認定を受けなければならず(土地収用法一六条)、都市計画の場合、都市計画法上の認可または承認を受けなければならないが(都市計画法七〇条、五九条)、その都市計画決定に関連した都市計画事業の認可を受けることを要求する規定はないのであるから、原告の見解は独自のものというべきである。

また、地下部分については、別に事業認定が必要であるとも主張するが、本件収用裁決は、本件都市計画事業変更認可を受けて、本件土地の所有権の取得を認めたものであるから、地上部分と地下部分を分けて、地下部分については、別の事業認定が必要だとは解されない。

そして、既に必要な土地を取得しているため、新たに土地を収用する必要がないものについては、事業認可(都市計画法五九条)を受ける必要はないものと解されるところ、本件土地を含む本件駐車場事業地は既に参加人が取得していたので、事業認可を受けていないものであり、違法な点はない。

よって、この点に関する原告の主張も理由がない。

第六 結論

以上によれば、原告の請求は理由がないので、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鏑木重明 裁判官 末永雅之 小西洋)

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